一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 ――断れるものなら、断りたい。今日の様子だと、文句を言わず、逆らわない便利な妻が必要で、弱みにつけこんで結婚を決めたっていう雰囲気だった。

 だから、向こうから断ることはない。
 ハンガーにかけたワンピースを眺め、溜息をついた。
 私が作ったワンピースは洗濯機で洗えたけれど、ハイブランドの『Lorelei(ローレライ)』のワンピースはクリーニング行き。
 布素材にシルクが使われていて、洗濯機で洗うなんてとんでもない。
 もしかすると、糸もシルクかもしれない。
 『Lorelei(ローレライ)』ならあり得る。

「雨の日に着るようなワンピースじゃないわよね」

 ゆったりとしたコットン素材のルームウェアは、紺色のコットンシャツに白と紺のギンガムチェックのパンツ。
 ベランダから見える外は薄暗くなり、まだ雨がしつこく降り続いていた。
 温かい飲み物でも飲もうかと、ポットを手にした瞬間、スマホの着信音が鳴った。

「あれ? 職場から電話?」

 電話の相手は、デザイン事務所の所長『Fill(フィル)』のトップデザイナーである紡生(つむぎ)さんからだった。
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