一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 何の用だろうと電話をとった。

「もしもし、紡生さん? なにかありました?」

『HEY! 琉永(るな)ちゃーん! フランスに行きたくなーい? フランス、パリ!」

 その声は鬱陶しい雨すら、ものともしない明るい声だった。
 底抜けに明るい紡生さんなら、雨に濡れても笑っていそうだけど――パリ!?

「私がパリに行くんですか? こんな急に!?」
『そぉ。本当は私が行く予定だったんだけどさ。デザイン画が終わらなくて、メグミンがさぁー』
『次にメグミン呼びしたら、完成しているデザイン画を刻むわ』

 電話の向こうで、ハサミをシャキシャキ鳴らす音がして、紡生さんのテンションが、一気に下がるのがわかった。
 さっきまでの浮ついた声が、紡生さんから消えた。

『あの、琉永ちゃん。聞こえたと思うけどさ……。しっかり者のパタンナーにして我が相棒の恩未(めぐみ)さんがですね。デザイン画が終わるまでは日本を離れることは許さんって、鬼のようなことを申されているんですよ」

 紡生さんと恩未さん――二人は私の専門学校時代の先輩だ。
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