一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 暗い顔で、重い足をズルズルひきずり、ホテルのロビーを歩く。
 そんな顔をしているのは、きっとこのホテルで私だけ。
 六月のホテルはちょうど結婚式のシーズンで、結婚式に招待され、綺麗に着飾った人たちが大勢いた。
 ホテルのロビー中央には大きな花瓶が置かれ、新婦のウェディングドレスを表現した白い花が、豪華に飾られている。
 白百合、アルストロメリア、アンスリウムが何本も使われ、それぞれ微妙に違う白。

 ――同じ色でも人によって、見える色は違う。

 メンタルの状況でも変わるそうだ。
 私にそれを教えてくれたのは、モデルのリセ。
 パリコレにも起用されるモデルのリセが、雑誌のインタビューで答えていた言葉で、リセが載っている雑誌は、なるべく購入するようにしている。
 中性的なモデルのリセが持つ雰囲気は、他の誰にもない唯一のもの。
 女性なのに、メンズモデルかと思うくらいのかっこよさ。
 クールで堂々としているだけじゃなく、彼女の言葉には、人を動かす力がある。

 ――いつか、私がデザインした服を彼女に着てもらいたい。

 美しい花を眺めながら、自分の夢を心の中で語る。
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