一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 こぼれた涙をぬぐいながら笑った。
 嬉しいのに悲しくて、楽しいのに苦しい。

「琉永はお見合いを承諾したんだ?」
「するしかなかったんです。勝手に父と継母が決めてしまって……」

 リセは泣いている私に、ハンカチを渡してくれた。

「父の会社が危ないっていうのもあるんですけど、一番の理由は妹なんです。妹が大学を目標に頑張っていて……。父は妹の大学費用を出す代わりに結婚しろって」

 妹の千歳(ちとせ)は努力家で勉強もできる。
 千歳には体の弱い自分のような子を治療する医者になりたいという夢があった。
 だから、大学は医学部に進学したいとずっと昔から言っている。
 姉として、千歳の夢を応援してあげたい。
 ワインを一口飲んだ。
 白ワインの爽やかな味とムール貝がよく合う。
 今がこんなに幸せなのに、この時間が終わったら、私はまた現実に戻らなくてはいけない。

「もぉー、最悪ですっ! 好きでもない相手と結婚なんかしたくないのに……。でもっ……妹だけなんです。わたしの家族って呼べる存在は……千歳だけで……」

 リセは私に同情してくれているのだろうか。
 私の頭をなでてくれた。
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