一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 ふわふわした気持ちは、お酒が入って、さらに加速した。

「リセもどんどんっ! 飲みましょう!」
「もう飲まないほうがいい。飲みすぎだ。帰れなくなるぞ」

 なんだか、今のリセは男の人みたい。
 どうして、そんなかっこよく見えるんだろう。
 男の人なら、間違いなく恋に落ちてた。

「私の婚約者がリセならよかった」
「そんなに婚約者が嫌なのか」
「あったり前ですよおー! リセ、私の婚約者になってくださいっ! なんちゃってー!」
「いいよ」
「わぁー……うれしーい……」
「この姿でそんなことを言われたのは初めてだ。大抵、相手の女から断ってくる」

 ――今、女っていった? リセの相手って女の人? まあ、細かいことはいっか!

 ぐびぐびと水のようにワインを飲んだ。

「リセが美しすぎて、みんな気がひけちゃうのかもしれないですね」
「そうかな」
「じゃあ、リセは私の婚約者ですね。冗談でも嬉しい……夢、夢だし」

 そんなこと現実にあり得ない。
 でも、これはきっと神様がくれた私へのご褒美。
 私が見ている夢なんだから、どこまでも図々しくなれた。

「いい夢です………」

 しくしく泣きながら、テーブルに顔を伏せた。
 アルコールが回って、眠くてしかたがない。
 ゴンッとおでこがテーブルにぶつかる音が聞こえた。

「あ、こら! 寝るな!」

 リセの焦る声が聞こえてきたけど、私はまぶたを開けることができなかった。
 
 ――だって、これは夢なんだから。

 そう思っていた。
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