一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 それがわかったのは、ライトアップされたエッフェル塔が窓から見え、てっぺんの高い所に、月がかかっているのを目にしたから。

「月が見える……」

 私が作った印として、服のタグにつけているロゴと同じ三日月。
 憧れのリセと出会てた特別な夜と三日月なんて運命的――って違う!

「どういうこと? なにが起きたの?」
「それはこっちのセリフだ」

 リセが不機嫌そうに、バスルームから出てきて、髪を拭いている。

「す、すみませんでした! 部屋を間違えました! い、いえ……。そうじゃなくて、間違えたのはホテル?」
「酒の量だろ」
「そう酒の量ですよねって、同じくらいリセも飲んでいたのに……」

 頭の中は大混乱だった。
 ベッドの上にいるし、枕を抱きかかえて、ちゃっかり占領してしまってる。

 ――まさか、リセが泊まってるホテルに来てしまった?

「なかなか重かった」

 カフェでの出来事が夢ではなくて、現実のものだったんだとわかり、ホッとした。
 でも、それと同時に青ざめた。
 つまり、私はリセに自分の重い体を運ばせてしまったってことで……
 リセが暗闇の中で、ため息をついたのがわかった。
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