一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
「本当にすみません……。重かったですよね。リセがここまで私を運んでくれたんですか?」
「誰が運ぶんだよ。他に誰もいなかっただろ?」

 バスルームから出てきたリセは、バスローブを羽織り、細身だけど鍛えられた体が見えた。
 メイクを落とし、服を脱いで、アクセサリーがなくなると、女性らしいイメージは完全になくなった。
 月を背に立つリセは、女性でも男性でもなく、月の化身のようで、人間ではないような気がした。

「まあ、俺はお前の婚約者らしいからな?」
「え? でも、あれは――」

 リセが私に近寄り、ベッドに手をつく。 
 ぎしっとベッドが軋む音がして、息をのんだ。
 
 ――私ってば、おかしい。リセは男の人じゃないのに、どうして緊張しているの?

 私の体を背後から抱きかかえ、背中のファスナーを歯で噛み、ゆっくりとおろす。

「リ、リセ? なにして……」

 ただそれだけなのに、肌が粟立つ。
 リセの両手が、私の体を逃さぬようにしている。
 最後まで背中のファスナーを下ろすと、リセの唇が耳に触れた。

「あ、あの、唇が耳に……」
「嫌?」

 耳に息がかかり、体から力が抜けていく。
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