一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
第11話 Lorelei
 コーヒーを配り終え、今日のスケジュールを確認した。
 今日は店舗チェックに行く日で、ファッションビルにある『Fill(フィル)』の店舗へ顔を出す予定になっていた。
 お客様の様子をうかがうのはもちろん、店員さんたちから反応を聞いたり、売れ行きをチェックする仕事だ。
 自分がデザインした服が売れていると、すごく嬉しい。
 今のところ、私がデザインした服は一着だけ。
 四月から本格的に働きだした私だけど、以前から学校に通いながら、この事務所でバイトをし、勉強させてもらっていた。
 事務所の立ち上げから、とんとん拍子の『Fill(フィル)』は、人手が足りない。
 いいことだけど、とても忙しい。
 でも、無名で卒業したばかりの私が、デザインしたものを形にできるのは、ここしかない。
 一着だけでも形になった時は達成感があった。

 ――来年、紡生さんたちが褒めてくれたデザイン画を形にしたい。

 来年の今ごろ、私はきっと結婚しているはずなのに、結婚話が白紙にならないか、期待している自分がいた。

 ――無理だってわかってる。自分の夢は諦めたくないけど、千歳(ちとせ)の命には変えられない。
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