一目惚れ婚~美人すぎる御曹司に溺愛されてます~
 どうして、父は自分の娘である私たちを利用することしか考えてないのか……
 自由に生きれない私と好きなように生きてる父。

 ――お母さんが生きてたら、違ってたのかな。

 憂鬱な気持ちで傘をさし、雨の中、事務所を出る。
 地下鉄に乗り、地上に出ると、灰色の空の隙間に青空が見え、雨があがっていた

「せめて結婚してからも仕事を続けられたらいいのに……」

 ため息をつき、必要なくなった折りたたみ傘をバッグにしまう。
 帰ってきた私を待っていた現実は苦しいものだった。
 INUIグループの乾井(いぬい)啓雅(けいが)さんとの結婚話はなくならないだろう。
 お見合いの席で見た力関係を考えたら、こちらから断るのは難しい。
 事務所のみんなには、お見合いがあることを言えなかった。

 ――言えないわ。自分が父親から道具みたいに使われて、継母から嫌われてるなんて。

 どう考えても重すぎる。
 そんなふうに扱われてる自分が恥ずかしくて、悲しくて、苦しい――
 でも、酔っていたからか、リセにだけは言ってしまった。

 ――私、どうしてリセには言えたんだろう。
< 82 / 260 >

この作品をシェア

pagetop