政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 味方であって良かったと思う人物はこういうものなんだろうと思う。

「園村さんからの依頼なんだ。入院前に会って会社を頼めないかと言われた。ふざけているのかと思ったよ、最初はね。でも入院先の病院に呼ばれて念押しされたら断れない。もう、本当に時間はないんだ」

 片倉は自分が園村から受け取った資料に、片倉の意見を添えた資料を槙野に渡す。
 槙野はそれをパラパラとめくった。
 それは槙野ありきの資料のように感じる。

「これは俺が行く前提だな?」
「お前じゃなきゃできない。あと、結婚する」
「は……? 誰が?」

「僕だ」
「そんな相手、いるのか?」
 片倉が最近、仕事以外のことをしているところを槙野は見たことがない。

 もちろんデートもだ。
 つまり、そんな相手がいるとは思えない、ということだ。

「いなかったけど。できたんだ。園村さんのお嬢さんだよ」
「はあ⁉︎ なんだよそれ。会社と一緒に押し付けられたっつー話? いいのかよ? それって政略結婚て言わないか?」

 槙野は片倉には返し難い恩があるし、片倉に傾倒してもいる。園村の事も尊敬してはいるけれど。
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