政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
それでも浅緋に苦手意識を持たれていることは、感覚でなんとなく分かる。

 上手くいかないものだな……と思うとため息が出る。
 そんなことを考えながら、ミーティングから帰ってきたら、ふと、浅緋の声が耳に入り、槙野は足を止めてしまった。

「片倉さん?」
と囁きかけるような声がとても甘かったので。

 普段から確かに浅緋は誰に対しても優しいけれど、そんな甘い声は聞いたことがない。

 浅緋が物陰で電話をしていたのだ。

 なんだ、上手くいってるんだなと思ったし、あの2人がどんな会話をしているのかも興味があった。

 普段、浅緋は槙野には怯えてしまって、会話も少ないのだからなおさらだ。
 だから、立ち聞きはいけないと思いながらも思わず足を止めてしまったのだ。

「今日は、お友達がお夕飯に誘ってくださったんです。あの、帰りに食事をしていってもいいですか?」
 外出のための許可を取っているようだった。

 槙野は今まで片倉が、お付き合いしている女性に対して束縛しているところを見たことがない。
 お互いにお互いのペースで、というのが片倉のスタンスなのだ。
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