政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 これは、浅緋がきちんとしているのか、片倉が大事にしているのか?

──両方か……
 電話の向こうで片倉が何か言ったらしく、
「……っ。大丈夫です、たぶん」
と言う浅緋の慌てた声が聞こえた。

 ふと見えてしまった浅緋の横顔は、今まで槙野には見せたことのない顔だ。
 ふわりと頬を染めて電話を握りしめて、電話の向こうの片倉の言葉の一言も聞き漏らさないようにしている。

 ま、仲良いのは良いことだよな。
 槙野は少しだけ複雑な気持ちでその場を離れた。

 それは、親友を取られた寂しさなのだろうな、と槙野は自分の気持ちを分析していた。

 槙野の帰りがけに、会社で見たことのある数人が歩いているのを見たのは偶然だ。

 その中に浅緋がいた。
 入っていった店を見て、ああ、昼間に言っていたのはこの店なのかと思ったくらいだ。

 ただ、見過ごせなかったのは、そこに男性社員が合流したように見えたからである。
 そのまま放っておくこともできたが……。

「くそっ……」
 しばらく見ていると、やはり浅緋達の席に男性が合流した。

 浅緋はひどく戸惑っている様子だった。
 槙野は片倉と連絡を取る。
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