政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 それに、浅緋は片倉達のことをハゲタカのようだなんて、思ったこともなかった。

 なにを言っているの?
 この人は?

 表面上はにこにこと笑っているけれど、今まで接点がなかった分、浅緋にとっては知らない人同様なのだ。

「けれど、役員の中にはね、彼らのやり方を好まない人達もたくさんいるんだよ。浅緋さんを人質に取るようなこんなやり方はおかしいと」

「人質? どういうことです?」
「そんな愛のない結婚をさせられてかわいそうだということですよ」
 それを聞いて、浅緋は一気に血の気が引いた。

 そうだった。
 片倉がとても優しくしてくれるから、ずっと忘れていた。

 片倉が浅緋との結婚を決めたのは、父の遺言があったからだ。
 周りから見ても『政略結婚』そう言われても不思議はないことなのだった。

 愛のない結婚。

 だからこそ、今日の朝のことだって別に急に起こったことではなくて、単に政略だったと片倉が思っただけのことなのかもしれないのだ。

 浅緋が真っ青になってしまったのを見て、久保は畳み掛けるように言葉を続ける。
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