政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「どうしました?」
「私もです。私もヤキモチやきました。今日のレセプションでの素敵な女性です。お名前で呼んで仲良さそうだったわ」

「彼女は取引先の役員です。兄妹で役員をしているので、苗字で呼ぶとややこしいからあのような会では名前で呼ぶことが多い人なんですよ。今日は兄の方も来ていましたしね。」
「やだ……私、ごめんなさい」

ヤキモチなど、本当に恥ずかしい。
けれどよく考えてみると、浅緋でさえ恥ずかしいと思うようなことを、先程片倉は告白してくれたのだ。 

 浅緋は顔を上げて片倉を見た。
(あの……、見たことないようなお顔なのですが)
 片倉は幸せそうに、愛おしげに浅緋を見ている。

「どんな気持ちになったの?」
 そう聞かれて、浅緋は先程の気持ちを一生懸命思い出す。

「顔から血の気が引くというか、とても寂しい気持ちです」
 浅緋のその言葉を聞いて、片倉はさらに浅緋をきゅうっと抱きしめた。

「ならば安心してください。僕は浅緋さんのことしか好きじゃない。浅緋さんだけが愛おしくて、浅緋さんだけを守りたいんです。浅緋さんだけが僕をこんな気持ちにさせるんだ」

 強く抱かれて足元が浮き上がりそうだ。片倉は浅緋の名前を何度も何度も呼んで低くてよく響く声を浅緋の耳に届かせた。
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