政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「いや、その本屋と雑貨屋が一緒になっているところに行こう。途中でご飯も食べようか。この近くのお店、浅緋まだよく知らないだろう?」

「あ! じゃあ、パン屋さんを教えてください! いつも買ってきて下さるお店を知りたいです」
 嬉しそうに言う浅緋に片倉は笑顔を向ける。

「実は何軒かあるから、今日はそのうちの1軒を教えてあげる」

「はい! 慎也さん、ありがとうございます……」
「ん?」

「とっても楽しいです。私、慎也さんと知り合えなかったらきっとこんな楽しさも知らないままだったと思うんです」

 片倉だってそうなのだ。
 浅緋でなければ、本を選ぶだけの彼女を見たいなんて思わなかっただろう。

 効率性や合理的なことがベストなのだと考えがちな片倉に、浅緋はいつも違う感動を与えてくれる。
 浅緋だけが、片倉にそんな気持ちをくれるのだ。

「じゃあ、出かけようか?」
「はい!」

 2人は家を出て、駅に向かって歩き出す。

 駅までの道にはマンションの敷地の中に木立が並んでいる道もあって、そこを通るのは浅緋は初めてだった。
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