政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 陽射しを遮る木陰に風が通ってとても気持ち良い。

「こんなところ、あったんですねえ」
「昼間はいいけれど、夜は危ないから通らないでね」
「はい」

 片倉がはい、と手を伸ばすので、浅緋はそっとその手を握る。
 きゅっと指を絡められて、ドキンとした。

 道の向こうから小さな子供を連れた家族連れが歩いてくるのが見えた。

「しんちゃん、ほら、向こうから人が来るから気をつけなさい」
「はあい」

 道の真ん中をぴょんぴょんと歩いていたちっちゃい男の子はお母さんに注意されて、ぴょん!と道の端に寄る。
 とても微笑ましい光景だった。

「こんにちは!」
 その子はとても元気に挨拶をしてくれた。
 マンションの敷地の中なので、顔を合わせたことはないけれど、おそらくは住人なのだろう。

「こんにちは」
 浅緋もしんちゃんと呼ばれた子供に笑顔を向ける。

「こんにちは」
 片倉は両親へ頭を下げている気配がした。

 少し歩いて、浅緋は片倉を見上げる。
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