政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「はあ……?」
 てかなんの?

 何か案件で時期を計りかねるようなものがあっただろうかと槙野は思い返してみたが、そんな心当たりはなかった。

「何か時期を逃しているような案件あったか?」
 片倉がふっと目を伏せた。

 こいつ本当に顔立ちは間違いなく整っているんだよなあ、と槙野は片倉のその端正な顔に目をやった。

 眉間に皺が少し寄っていた。表情を出さない片倉としては本当に珍しいことだ。

「今までこんなに自分を不甲斐ないと思ったことはない」
「そんなことあるのか……」

 片倉でさえ難しいという案件。
 一体なんなのだろうか。

「フィジカルコンタクトだ」
「フィジ……なんだ⁉︎ まさかゆるふわとのことか? ヤッてないって話⁉︎」

「品のない言い方はやめてもらおうか」
 片倉に冷たく睨まれるのは普段なら震え上がるんだろうが、槙野は今それどころではなかった。

「品もくそもあるか? 大体、寝室が一緒だとか、朝は一緒に食べていて充実しているとかいうから、そんなことはとっくに済ませていると思うだろう⁉︎ 片倉にしては珍しく入れ込んでいると思ったがそうでもないのか?」
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