政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「ダメに決まっているだろうが!!」
 すかさず槙野は突っ込みを入れた。

 真っ直ぐな目をするな!
 どうして?とかいう表情をするな!
 浅緋を溺愛しすぎて、こいつ厄介過ぎる!!

 しかもこんなに溺愛している相手と寝室が一緒なのに何もないだと?
 どんな心頭を滅却しているんだ、こいつ?!

 そんな槙野に決裁を迫られ、微妙な目で見られながら書類を渡した片倉は、帰り支度を始める。

 そうして、帰り道の車の中だ。
──あんな目で見なくてもいいだろうに。

 槙野のことである。
 見た事のない生き物を見るような目で見られた。

 小声で「よく我慢できるな……」と言ったのも聞こえていた。
 もちろん浅緋とのことは焦ってはいないけれども、意識をしてほしい気持ちはある。

 片倉自身正直に言えば、可能ならば今すぐでも抱きたい。
 あの白い肌に指を滑らせて、触れて味わって、甘い声を聞きたいと思う。

 焦ってはいない。大事にしたい。今すぐ抱きたい。
 相反するすべての気持ちが正直なところだ。

 そして嫌じゃない。怖い、けれど大事に思ってる、という浅緋の気持ちも理解している。
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