政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 もう、2人の間に障壁はないと思っていたが、お互いが大事な気持ちが障壁になるなんて、片倉は思っていなかった。

 片倉は綺麗なラインの口元に指をあてて考える。
 園村の浅緋に対する言葉が蘇ってきたから。

『積極的ではないけれども、落ち着いて物事をしっかり見ることのできる子だと思う。思慮深い子なんだ』

 その思慮深さで自分の気持ちを理解してほしいと思った片倉は、タブレット端末の操作を始めた。

「到着しました」
 渡辺の声に片倉は自分が集中していたことを知った。

「ありがとう」
 お礼を言って車を降りた片倉は、マンションのエントランスに向かう。

 今日も0時を過ぎての帰宅で、浅緋はすでに休んでいる。

 その安らかな顔を見るのが片倉の最近の楽しみでもあるが。
「もう少し、頑張ってみない?大事にする。愛しているから。浅緋」

 目を閉じている浅緋の額と頬にそっと指を滑らせた後に唇でたどった。



 その数日後の事だ。
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