政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「気持ちいいよ。こうやって、触れてくれるのも。浅緋も僕とのキスを気持ちいいって思ってくれたら嬉しい」

 浅緋が触れている片倉の頬の手はそのままに、片倉は今度は浅緋の顔に、自分の手で触れて顔を近づけた。
 唇がそっと重なる。

 浅緋には気持ちいいというよりも、ドキドキしてしまう。

 唇を何度も重ねながら、片倉の手が耳元に触れた。
 それにピクンと身体が揺れてしまって、せっかく息ができるようになってきたのに、途端に呼吸の乱れる浅緋だ。

 そのまま首に触れた手は浅緋の首の後ろをきゅっと抱いた。その後は知っている。
 片倉の舌が浅緋のものと絡み合う深いキスになるのだ。

 緩く口の中で絡み合わされると、身体の力が抜けそうになる。
 ふにゃっと力なく、浅緋は片倉にもたれた。

「気持ちいい?」
 耳元でそっと囁かれる。

──気持ちいい?

 力が入らなくて呼吸が乱れてしまって、胸が苦しくなってなんだか身体の中心がきゅんってするような、自分で自分の身体が支えられないような、これが気持ちいいってこと?
 浅緋は片倉にぎゅっとしがみつく。
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