政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 浅緋の事を愛おし気に見つめる片倉と、片倉の事を心から信頼している浅緋が片倉を見つめるその雰囲気は、誰も邪魔できないようなものだった。

 スマートな片倉と清楚な浅緋は見ていてうっとりするようなカップルなのだ。

 それまで、政略結婚では⁉︎という噂があったなど、この片倉の訪問でどこかに行ってしまっただろう。

 それくらいに2人の雰囲気はお似合いで甘い。
 片倉は浅緋に笑顔を向ける。

「何かあったらいつでも言ってくださいね」
 浅緋はにっこり笑った。
「はい」

 周りの同僚も浅緋が無防備な笑顔を向けるところなどあまり見たことがなくて、元々綺麗だとは思っていたけれど、あんな表情をするんだ、と浅緋の表情を見た人は驚いている。

「片倉CEO? みんな仕事に集中できなくなるんだが?」
 槙野がそう声をかけると、片倉は出口の方に顔を向けた。

「ああ、悪い。じゃあ、浅緋、後でね」
 それでも、浅緋に一言声をかけることは忘れない。

「はい、また後で」
「園村さん、30分後に社長室にお茶をもってきてもらっていいかな」
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