政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その声を聞くだけで、自然に浅緋の瞳が潤んでしまう。

──どうしよう。とても好きだわ。

「怖い?」
 そんな浅緋を見る片倉の瞳はこの上なく優しい。

「怖いはずなんて、ありません。ただ、……嬉しいだけなんです。慎也さん、大好きです。とても好きなんです」
 浅緋は自分から手を伸ばして、きゅっと片倉に抱きつく。

 片倉は甘く浅緋の顔を覗き込みながら、そっと顔に触れる。

「僕も大好きだ。浅緋がこの世で一番好きで、一番大事。浅緋さえいてくれたら、他に何もいらない」

 囁くような甘い声が浅緋の耳をくすぐる。
 最初に会った時から、良く通って響く声の持ち主だと思っていたけれど、こんな時はくすぐるように優しいのだと知った。

「この世で一番……なんて……」
 浅緋がくすくす笑うと、片倉は嬉しそうな顔になる。

「本当のことですよ?」
「浅緋……」

 帰ってきてジャケットを脱いだままの片倉が、浅緋の上で首元に指を入れ、ネクタイを外す。
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