政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「……っふ……慎也、さぁん……」
「んー、隠しても無駄って分かった?」
 つい声の漏れてしまう浅緋を楽しそうに片倉は見ているから。

「いじわる……してます?」
 真っ赤になってしまっているだろう顔を、浅緋は片倉に向けた。

 とっても責めたい気分だったので、いつになく、むううっとしていたかもしれない。

「なんて顔で見るの。可愛すぎ……」
 片倉は髪をかきあげ、ため息をついてうっとりと浅緋を見る。

──あのっ、少しだけ怒ってますよ?

「そんな本音の顔、僕に見せてくれるとか幸せすぎるから」

 その浅緋の何もかもを好きなのだと表現されると、浅緋もどうしたらいいか分からない。

「いじわるじゃないですよ。どこもかしこも、全部可愛くて全部僕のものなんだと確信したくて、キスしてます。いや?浅緋」

「いやならやめる。それにさっきも言ったでしょう?どんな浅緋も全部見たくて欲しいんだ」
 そう言っている間にも、耳にも首にも肩にも、あちこちにキスをされてしまうのだ。

「あのっ、肌……が、」
「肌? ああ、触れるよね? 気持ちよくない?」
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