政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
「慎也さん!傘を……」
「いや、すぐだからいい」

 足早に大きな屋根のある門の中に入り、呼び鈴を押した。
 戸惑った声で出たのはおそらくお手伝いさんなのだろう。

 故人をお見送りしたばかりなので、今日は遠慮してほしいというようなことを控えめに言われる。

 片倉はこんな時に申し訳なく思っていること、園村からの手紙を預かっていることを伝えた。

『ご主人様からのお手紙……でございますか』

「自分に何かあったら、ご家族にお渡しして欲しいと言われていたのです」

 帰れと言われることも覚悟していたのだが、お手伝いさんは一旦、門の所まで出てきてくれた。
 故人の意思を無下にはできないと思ったのかもしれない。

 片倉は深く頭を下げた。
「こんな時に大変申し訳ございません。お預かりししたお手紙はこちらですが、これには私に関わることも記載されています。詳細については改めますが、内容を確認して頂いて、ご挨拶だけでもさせて頂きたいのです」

『遺書』
と大きく封筒に書かれたそれを見て、お手伝いさんは頷いてくれた。
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