政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 園村の独特な筆跡に一瞬目を引かれて涙ぐんだようにも見えた。
 その封筒に片倉は懐から名刺を取り出して、添える。

「お渡しください」
「少々お待ちくださいませ」

 中に入っていったお手伝いさんを待つ間、片倉は祈るような気持ちだった。

「奥様とお嬢様がお会いになります。どうぞ」
 玄関先に案内されて、落ち着いた和風のしつらえを目にすると片倉はホッとする。
 園村らしい自宅の造りだ。

 やがて、ゆっくりと二人が姿を現した。
 まだ、着替えてもいなくて葬儀場で見たそのままだ。

 待っているうちに濡れそぼってしまった片倉を気づかって、バタバタとタオルやら何やらを用意してもらううちに、申し訳ないような気持ちになった。

 お上がりくださいと言われたけれど、それは固辞する。
 ただし、タオルはありがたく借りて、濡れた衣類を拭かせてもらった。

 その後も上がってくださいと言われたが、それだけは断らせてもらう。

 今日は手紙を渡すことと、挨拶さえできればそれで良かったのだし、浅緋が心配げな顔で見ているのが、正直落ち着かない。
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