政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 それで不信感を持たれても意味がないので、喜んでと片倉はにっこり笑った。

「あの人はとても面倒見のいい人だったんですけど……」
「そうですね」
 縁側のような場所で、薫り高い紅茶を淹れてもらう。

 そこからは、あの桜の木が見えた。
 浅緋が職人さんに切っちゃダメ!と泣いて頼んだというあの木。
 両手を広げて笑顔を浮かべていた、あの木だ。

「誰かにお願いしたり、信頼することはとても苦手な人だったんですのよ」
 奥さんの声に片倉は意識をこちらに戻す。

 そうかもしれない。
 園村は自分の没後のことにまで配慮するような人だ。
 
「でも、あなたのことはとても信頼していたのね。こんな風にいろいろと丁寧に対応してくださって、感謝しています」
 奥さんはそっと片倉に頭を下げた。

 片倉はこんな風に改めてお礼を言われるとは思わなかったので、少し戸惑う。
「いえ。事業のことはお任せいただいても問題ないと思います。うちのスタッフの中でも特に優秀な人材を送る予定にしていますし、どんな形を取るにせよ、奥様と浅緋さんは必ずお守りします」
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