政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 確かに泣いたばかりの顔なんて、女性はきっと見られたくないだろう。
 だから、ふと顔を逸らして、泣くことについての効果を伝える。

「泣くと副交感神経が働くそうです。それによって、気持ちが落ち着いて、リラックス効果を得られるそうですよ。今日は、しっかり寝てくださいね」

 だから、悪いことじゃないんだ、と分かってくれたらいい。

 くすっと笑い声が聞こえて、浅緋が笑顔になった。
 初めて片倉に向けてくれた笑顔だ。

 それに一瞬見惚れてしまう。
──なんて可愛いのか。

 少しずつで構わない。
 片倉のことを認めてくれたら。

「お食事にしましょうか」
「はい」

 片倉に返事を返した浅緋は少しだけ、気持ちがすっきりとしているように思えた。

 そうして今後のことを打ち合わせしながら、食事をする。

 品の良い箸使いや、綺麗な姿勢や食事にふさわしい会話。今後長く一緒に過ごすのならばとても大事なことだ。
 浅緋はそのあたりのマナーもさすがで、片倉は楽しく、有意義な時間だったと思う。
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