政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 帰りの車の中で、片倉は決心を固めた。
 一方的な思いかもしれない。
 浅緋は両親に言われて、片倉と一緒になるだけなのかもしれない。

 それでも、この人を幸せにしたい。
 一緒にいたい。そして、自分のものにしたい。そう思った。

 ポケットの中身を片倉はきゅっと握る。
 浅緋が車を降りた時、片倉はその後を追った。
 そうして、浅緋の前に立つ。

「本当は……お渡しするのを迷ったんですが、受け取って頂けますか?」
 指輪を見て、浅緋は驚いていた。

「婚約指輪です」
 そう伝えると俯いてしまったのだけれど、小さな声で浅緋が「ありがとうございます」と言ったのが聞こえた。

 浅緋の手を取り指輪をつけた時、片倉は嬉しかったけれど、そこにもしかしたら浅緋の感情はないのかもしれないということに思い至る。

 それを思うと申し訳ない気持ちになった。
 それでももう手放すことはできない。

 指輪をしてもらうことで、浅緋をさらに縛ることになる。自分は分かっていてそれをしているのだから。
──ごめんなさい。
 僕はあなたをもう離せない。
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