政略結婚かと思ったら溺愛婚でした。
 その極々小さな声が浅緋の耳に届いていたなど、片倉は思ってもみなかったのだ。



 そしてその数日後、片倉は懇意にしているインテリアコーディネーターを会社に呼んだ。

 それは今の片倉のマンションをコーディネイトした人物で、部屋の間取りのことはもちろん、片倉のこだわりについても理解している。

「こんな感じではどうですか?」
 そう言ってデザイナーは片倉の方にパソコンの画面を向けた。
 片倉はそれを覗き込む。

 片倉が伝えたのは優しくて柔らかい雰囲気で、と伝えただけだ。

 それでも片倉の意を汲んで、オフホワイトの家具を配置し花柄のカーテンをセットし、優しい雰囲気に部屋をデザインしてくれていた。

 パソコンの画面上でそれを確認した片倉はデザイナーに説明を受けながら、仕上がった状態のパースを見せてもらう。

 3Dで立体的にデザインされたその中に、浅緋がいることを想像する。
 充分に満足なものだった。

「うん。可愛いな」
 その片倉の微笑む顔を見て、デザイナーも嬉しそうな笑顔を向ける。
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