僕惚れ③『家族が増えました』
***

 家に戻ると、セレが日当たりのよい寝床からむくりと起き出して、伸びをしながらじわじわと理人(りひと)の元へ歩み寄ってきた。
 そっと抱き上げると、陽だまりにいた子猫の身体は太陽の熱を宿してほんわかと温かかった。

「日向ぼっこしてたの?」

 聞けば「にゃーん」と返事が返る。何て賢い子なんだろう!と理人は一人ニヤニヤしてしまう。

「トイレはどうかな?」
 コンテナボックス内に設置したトイレの中を覗くと、(すみ)に小さなうんちがしてあった。

「トイレ、ばっちりじゃないか。偉いぞー、セレ」

 抱っこしたままだったセレを一度床に下ろして頭を優しく撫でてから、小さなジップロックを取って来る。それに便を入れて閉じてから、別のビニール袋にインして口をギュッと結んだ。

 要らないかもしれないが、必要ならこれを検便してもらおう。葵咲(きさき)を送るときにはしていなかったはずだから、このうんちはセレがしてからそれほど時間が経っていないはずだし。

 そんなことを思いながら石鹸で手を洗って、昨日葵咲と一緒にホームセンターで買ってきたキャリーを出す。

「セレー、病院行こっかー?」
 キャリー内のすのこ下にペットシーツを敷いてから、すのこ上にセレが愛用している寝床の中の毛布を敷くと、足元にまとわり付いているセレを捕まえてそっと中へ入れる。

 もう少し大きくなったら洗濯ネットに入れてからキャリーに入れた方が安全かなぁとか考えながら、入り口にロックをしっかりかけると、中から不安そうなか細い鳴き声がした。
「ごめんなー、セレ。ちょっと窮屈だけど辛抱だぞー」
 キャリーに向かって優しく声をかけると、理人は車へ向かった。

< 79 / 89 >

この作品をシェア

pagetop