魔法の恋の行方・ドラゴンのヘタレ純愛・シリーズ6(グラゴールとエリィ)
<深夜の台所・その2>

グラゴールは、
花弁が傷だらけになった
ゆりの花束を机に置いた。

エリィはすっと、
台所の扉の陰に身を寄せた。

アンナは
タオルを差し出しながら
「エリィ様は家に帰りたがっていらっしゃいます。
もう引き留めるのも限界でしょう。どう、されますか」

グラゴールは黙っていた。
アンナはその様子を見て言った。

「このままお会いにならないで、
お返ししましょう。
そもそも誘拐したのが、
ばれたら大変です。
旦那様の名前にも傷がつきます。」

エリィは息を呑んだ。
誘拐って・・・私が・・?

グラゴールは椅子に座り、
アンナの入れた熱いお茶ではなく、ブランデーを飲んだ。

「今なら、大きな騒ぎにならず・・・」

「わかっている!
わかっているんだ!」

グラゴールが大声をあげた。
その手で、
自分の髪をぐちゃぐちゃにした。

「遠くで見ているだけで
いいんだ・・・
エリィに嫌われるのが怖い。
俺の姿を見て、
ドラゴンが嫌いなんて・・
ドラゴンはキモイなんて
はっきり言われたら、立ち直れない・・」

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