魔法の恋の行方・ドラゴンのヘタレ純愛・シリーズ6(グラゴールとエリィ)
<エルフの神殿・出会い・その2>

グラゴールは壁際に沿って、
神殿の裏手に回った。
裏庭には
きっと井戸があるはずだ。

裏口の木戸は開けられていた。

そこは
たくさんの花が咲き乱れ、
風と共にハーブの香りが漂っている。
神殿の建物の裏口扉のすぐ脇に、
探していた井戸があった。

グラゴールは井戸のそばまで
行き、水桶を落とした。

バシャーン・・・・
その音と同時に、裏口の扉が開いた。

「お水は私が組みますよ・・
たいへんでしょう?」

井戸を覗き込んでいたグラゴールは、その声に顔を上げた。

扉を開けたのは、
まだ若い女性神官だった。

新緑を思い起こす
艶やかな緑色の長い髪、
同じ温かさを感じられる
緑の穏やかな瞳、

透き通るような肌は、水のエルフなのだろう。
顔立ちはうりざね顔で、
鼻と口が、かわいらしく収まっている。

神官の正装である
薄紫のローブには、金糸で細かく刺繍がほどこされ、
そこから華奢な白い手首がのぞいていた。

その女性神官は
グラゴールに柔らかな視線を向けると、微笑んだ。

グラゴールは息を呑んだ。
それから固まった。

熱が頭に上がり、
めまいに似たような感覚に襲われた。

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