魔法の恋の行方・ドラゴンのヘタレ純愛・シリーズ6(グラゴールとエリィ)
女性神官は軽い足取りで
グラゴールの持っているロープに
手をかけた。

「お婆さん?大丈夫ですか・
具合が悪いとか・・?」
彼女は心配げに、
グラゴールの顔を覗き込んだ。

「え・・・と」
グラゴールは
やっと気が付いた。

エルフに紛れるように、
自分は老婆の姿になっていたのだ。

「疲れるでしょう・・
そこで座っていてください」

すぐ隣に立つ女性神官からは、
香油なのか、
花のかぐわしい香りがした。

目を閉じると、
花園に立っているような気分に
なる。

老婆、いや、グラゴールの前で、
女性神官は水桶をくみ上げて
すぐ足元に置いてあるかめに
水をそそいだ。

「お水を飲んだほうがいいわ」
そう言って、
ひしゃくに水を汲んで、
グラゴールに差し出した。
その指は細く、爪はピンク色だ。

グラゴールは熱に浮かされたように、黙ったまま、そのひしゃくを
受け取った。

指が女性神官の手に
少し触れただけなのに、
雷に打たれるような衝撃があった。

言葉が出ない・・・
「お婆さん・・・?」

「ああ・・・」
促されて、
グラゴールはゴクリと水を飲んだ。

喉の渇きが収まると、
もう一度、女性神官を見た。

「また・・
ここに来てもいいですか・・?」
グラゴールは息を吐いてから、
ようやく声を出した。
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