買われた娘は主人のもの

メイドとエイミの身支度

 大男は無言のまま、エイミを屋敷の広い脱衣場に押し込む。
 そしてエイミの身体を軽く壁に押しあて、何のためらいも無く彼女が着ている薄い生地の服を破り捨てた。

「っやあっ!!」

 いくら世間知らずとはいえ、彼女も年頃の娘。羞恥心にそのまま膝を抱えてしゃがみこんだ。

 大男の表情は変わらない。
 そして何の感情も見えない声で、近くにいるらしい誰かを呼んだ。

「コリーン。御主人の命令だ」

 呼ばれて来たのはエイミから見ても少し歳が上であろう、背の高い、顔とスタイルの整った一人のメイドだった。

「分かっておりますわ」

 大男にそう一言応えるとメイドは、おぼつかない足取りの、生まれたままの姿のエイミの手を引いて浴室に入っていく。

(怖い…私、どうなるの…?)


 エイミは広い浴室でメイドのコリーンに身体の隅々まで磨かれ、口を開けさせられて確認のあと歯を磨かれる。
 その間、エイミはなされるがままになるしか無かった。


 濡れた髪をよく拭き取られ、身体には胸から│太腿《ふともも》が隠れるほどの高さの、巻きつけられたタオル。

 前に組まされた手首には縄が巻かれ自由も利かず、所有の印なのか首には皮の大きめなチョーカーが着けられた。
 先ほどの大男はその様子を、やはり全く表情が変わらぬまま監視をするように見つめる。

「バラド様、この│娘《こ》に異常はありませんでしたわ」

 テキパキと支度を終えたコリーンは自信ありげにそう告げると、エイミを大男、バラドの前に軽く押し出した。

「あ…」

 背中を押されたエイミはよろよろと一、二歩踏み出す。

「ただ、少々反応の鈍い│娘《こ》のようですから、御主人様のお気が立って居られるときには注意が必要かと」

 澄ましたコリーンは次いでそう付け加えた。

「…コリーン、余計なことはいい」

 やはりバラドは眉一つ動かさずそれだけを言うと、靴も与えられない裸足のエイミを連れてまた歩き出した。
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