買われた娘は主人のもの

買われた娘の『役目』

「あっ…!」

 部屋に一人押し込まれたエイミはそのまま床にへたり込んだ。

 貧乏人と後ろ指をさされて生きてきた。
 両親とともにろくな食事も出来ずに過ごしたことも。

 しかし、突然自分が金で買われ、金持ちの屋敷で身体を調べられ磨かれるなど考えもしなかった。
 ましてこのあと自分の身に何が起きるかなど、思い当たるはずもない。

 部屋には飾り付きの大きめのベッドが部屋の隅に置かれているのみ。
 もう夕刻らしく、飾り枠の窓の外に取り付けられた格子から見える空は薄っすらと赤み掛かっていた。


ガチャリ

 すぐ後ろの入り口の開く音に、エイミはビクリと身体を震わせた。

「何をしている」

 低くくぐもるその声に、すぐに主人だと分かった。

 エイミから主人の姿はまだ見えない。背中ごしに聞こえる主人の冷めた声に、身体が震えて振り返ることも出来ずうずくまる。

「…。」

 主人は無言のまま、まだ震えて言葉も発せないエイミの腰に片腕を回して立ち上がらせると、

「っや…!」

 そのままベッドに放った。
 手を縛られ、自分では身体を動かせないエイミはそのままベッドに倒れ込む。

「…痛っ…!」

「主人を待つ際に床にしゃがみ込んでいるなど、子犬にしてみれば上出来だ。しかしお前の役割はそうでは無い」

 主人は冷たい声でそう言い放つと、エイミの身体をベッドに強く縫い付けた。

「っ…!!」

 薄いシャツに少しゆったりとした下衣。
 まだ窓から差し込む赤い陽に照らされた無表情の白い面は燃えるよう。
 そこから覗く瞳はギラギラと光って見えた。

「人形を買ったつもりはない。…どんな声を出すのか、楽しみなものだ」
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