買われた娘は主人のもの
「…娘、さあ食事を…」

 自分の身体の熱さを感じるまま、今日もテイルの付き添うエイミの食事が始まる。

 そしてテイルはこの日、エイミのもとに来ることはなかった。



 夕刻。
 主人はエイミのもとに来ないとのことで、長めに仕事をすることになった。

 ぬいぐるみに自分の役目を見られてしまったあの一件のときから、エイミにしてみれば二日は主人と会わないことになる。

(…今は会わずに済んでいるけど、御主人様に捨てられるまで、お役目を頑張らなきゃいけない…でも、会うのが怖い…)

 コリーンは、エイミに主人のことに関しては何も言わなかった。ただエイミを優しく見つめ、いつものようにともに仕事を進めていく。
 エイミにとってはそのことがとてもありがたかった。

「お疲れ様。ゆっくり身体を流して、もう寝てしまいなさい」

「はい。ありがとうございます、コリーン様」


 バラドはいつものように廊下で待機し、コリーンはエイミを浴室で優しく磨く。

「…コリーン様…?今日は御主人様がいらっしゃらないのに、いいんですか…?」

 エイミの不安気な質問に、コリーンはクスリと笑って答える。

「御主人様が私に、『買ってきた娘の面倒を見るように』とおっしゃったのよ?今さらあなたとの時間を取り上げようなんて…ね?」

「…私、ここにいられなくなるかもしれないのに…」

下を向き、この先の不安と悲しみにくれるエイミにコリーンは真剣な表情になり、先ほどよりも小さな声で尋ねる。

「…エイミ、やっぱりここを出ていきたいの…?」

 コリーンの問い掛けに、エイミは下を向いたまま小さく首を横に振る。
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