・LOVER—いつもあなたの腕の中—
「そうですね。これは社員の方に無理を言って譲っていただいたものですが、H&T㏇さんから販売されている手帳は、どれも素晴らしいと思うのでお勧めです」


 取材に答えながらリュウにチラッと視線を向けられ。動揺した私がドキッとし肩を上げてしまったため、リュウが話した「社員の方」が私のことだと気づいた編集者さんが「もしかしてこちらの……」と言いかけた。


「はい。今回、H&T㏇さんから僕についてもらっている真島さんです。僕が説明するより真島さんから直接商品説明してもらった方が、文字起こしもし易いと思います」


 テーブル上には録音用のICレコーダーが置かれ。リュウが座る椅子の後ろの席に控えていたマネージャーさんの隣りで突っ立っていた私へリュウの手が伸びてくると、袖を引っ張られた。
 突然のことに驚きリュウに視線を落とすと。今度は、私を真っすぐに見つめるリュウと目が合う。


「隣に座って」

「え?」


 隣って、リュウの隣に座れと言っているの? マネージャーさんでさえ、後ろの席に控えていて同席していないのに?


「あの……」

「早く座りなよ、真島さんが座らないと話も進まないし、時間が押しちゃうじゃん」
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