・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 肩の荷が下りたように大きく息を吐き安心した様子のリュウに対し。裕隆さんとの過ちのキスを後悔しながらも沸々と湧き上がってきてしまう感情は。大きなモヤモヤした雲にリュウへの想いさえ覆われてしまう。


「ひとりで納得しているみたいだけど。どうするつもりなの?」


 これから先だって二足の草鞋を履いて行こうなどと考えているのなら、かなり無理があると思う。俳優としての基盤も出来てきて、人気も今以上に上がり注目されて。そのうえ俳優として波に乗っている時期に、もしも社長に何かあり会社を継ぐことになってしまったら? 好きな仕事をスッパリ切り離せないんじゃないの? だとしたら、社長に就任した後で今まで通りの仕事がこなせるとは到底思えない。


「だよな。親父も若くないし、そろそろ本気でどちらか一つに絞らなきゃいけない時なのかもなぁ」


 参ったなぁ、とでも言いたげに髪を掻いたリュウは苦笑いをしたけれど。本当に言いたかった言葉は違う。私がリュウに確認したかったことは、今後のことなんかじゃない。
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