・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 そりゃ気にするでしょ! あなたと私の接点なんて全く無いはずなのだから。というより、一度でも会っていたのなら忘れるわけがない。


「だっておかしいじゃない、初対面なのに私を知っているなんて」


 百歩譲って、どこかですれ違ったとしよう。顔を覚えていただけなら分かる。けれど私の名前まで知っているということは、少なくとも何処かで言葉を交わしたことがある証拠でしょ?


 疑惑の目を向ける私を見て、何処か余裕のある表情を浮かべた西田リュウは「さっき荷物を拾っている時に、名刺ケースも拾ったからだよ」と教えてくれた。
 どうやらケースから数枚飛び出していた名刺を拾った際、記されていた名前を見たかららしい。


 なんだ、そういうことか。……あれ? 何をガッカリしているんだ、私は。


 どうして肩を落としたのか自分でも分からなかったけれど、そんな私の様子を眺めていた西田リュウから質問された。


「ねぇ『H&T㏇』ってのは、お姉さんの勤務先?」

「はい、どうしてそこまで知っ……あ! ひとつ訂正させてもらうと私は二十九歳で、三十一歳のあなたより年下なので。あなたに『お姉さん』と呼ばれる筋合いは無いですから」

「俺の歳まで知ってるんだ? 詳しいね」

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