・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 深々と頭を下げ一礼し顔を上げて一番に目に飛び込んだのは……。


「どうも、真島優羽さん」


 副社長室の中央に配置されたレザーのソファセット。そのひとつに、くつろぐように深く腰掛け足を組んで座っている西田リュウの姿だった。
 初めて会った時と同じ、優しくて綺麗な声で私の名を呼ぶから。「どうしてあなたがここに居るの?」と周囲の目を忘れ話しかけてしまった。

 サラサラの髪は綺麗にカラーリングされた落ち着いた色味のブラウンヘアで、右から斜めに流している前髪から覗く一重のわりに大きい瞳と長いまつげ。スッとした鼻筋と赤みを帯びた唇は、最初に会った時と同じ。

 西田リュウの座っているソファの後ろに立ち、私に視線を向けているのは、あの夜に彼を追っていた女性マネージャーだ。目が合った瞬間、どちらともなく頭を下げ会釈をかわす。


「真島、わざわざ来てもらって悪かったな」


 初めて聞く副社長の声にビクッと肩を上げる。そうだ、私は副社長に呼ばれてこの部屋に来ていたのだ。
 視線を副社長のデスクに向けると、私に笑顔を向けている西田リュウの先に副社長の姿があった。


 この人が、吉野隆好(よしのたかよし)副社長……。想像していたより、ずっと若くて男前じゃない?

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