・LOVER—いつもあなたの腕の中—
 脳裏に「仕事頑張ってね」と励ましてくれた西田リュウの言葉が浮かぶ。
 日頃の仕事ぶりを知らず、我が社と契約を交わした西田リュウ側からのご指名なのだから。今回ばかりは逃げるわけにもいかないのだ。

 ポンコツはポンコツなりに、頑張らなくてはいけない時なんだよね?

 両手で握り拳を作り「よし!」と気合を入れ、再び会議に集中した。

 会議を終え久しぶりに仕事をした充実感に浸っていると、深山さんから定時間際に残業を命じられてしまった。
 せっかく定時で帰宅できそうだったから、真っすぐ帰り温かいお風呂にでもゆっくり浸かろうと思っていたのに。
 ちょっとお高めのトリートメントなんぞしちゃってさ、顔にパックしてみたり「たまには女磨きでも……」なんて考えたのが、そもそもの間違いだったのかな。


「はぁぁい、分かりましたぁ」


 何ともやる気の無さそうな返事を深山さんへ返し、椅子の背もたれに身体を預け天井を仰ぐ。ため息に近い息を吐き、勢いをつけ再びデスクへと顔を戻した。
 パソコンには溜まっているメールが未開封でズラリと並んでいて、既に見る気にもならない。しかし深山さんから指示されている、取引先との打ち合わせの日取りをメールで送っておかなければ、明日の朝一で雷が落とされるのは確実だし。

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