甘い夜の見返りは〜あなたの愛に溺れゆく
【君と出逢って~湊】
「あぁ、来週の佐々倉フーズの件だよね。いい会社と思います。社長も理念を持って、従業員を大切にしている。そんな会社と一緒に仕事をしていけることは、西条HDにとっても、財産になりますね」
俺は、新たに西条HDの傘下となる企業数社の件で、役員と食事をしながら打ち合わせし、ようやく終わって、役員と庭を歩いていた。

「ここの桜は毎年癒やされるよ」
見上げると桜の花びらが風に舞い、幻想的な世界だ。
手のひらにその花びらが舞い込み、何とも言えない淡いピンクに心が癒やされる。
「専務、そろそろ中へ」
中に入り、ホテルの状況を確認しに、ロビーに向かった。
「今日の部屋の状況はどうですか?」
「はい、1部屋キャンセルが出ましたが、今、空きがないかと、お客様がいらっしゃって、お泊まりが決まりました」
「そう、それは良かった」
満室になったことに安心して、部屋に向かおうとして、もう一度庭を眺めた。
「どこから見ても綺麗だなぁ…」
見渡すと、さっき俺が居た場所に、1人の女性がいた。
桜が散る中に佇む彼女に、俺は一瞬で心を奪われた。
桜吹雪が舞う中、淡いピンク色のワンピースに、白のカーディガンを羽織った色白の清楚な彼女は、風になびく髪を手で抑え、まるで妖精のように美しかった。
ただ、彼女には笑顔がなく、とても悲しそうで、今にも泣き出しそうだった。
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