再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

世間話をしながら一緒にコース料理を味わう。

それにしても北川さんは、食事をするだけでも格好いいなんて、罪深い人だ……っ。

動作も無駄がなくて優美だ。

実際、近くの席で女子会をしている社会人だろうお姉さま方が、北川さんをうっとりとみつめている。



「お酒にしなくて良かったんですか?」

食後の飲み物は、私と同じ紅茶だった。二十歳だからアルコールは解禁のはずだ。

「俺だけ飲むのも寂しいな、って。銘柄は詳しくないけど紅茶も結構好きだよ」

「私もです」


紅茶を味わいながら、お互いの学校の話をした。

私は孤立する前の友達との話を、今の出来事に改変して話してみせた。



「ごめんね」


北川さんは眉を下げて申し訳なさそうになっていた。

お会計の時、何故か北川さんが財布を出し始めていたので、それを阻止して私が払ったからだと思う。


「気にしないでください。今日は誕生日ですからね」


私がしたくてやっていることだからね。


「ありがとう」


北川さんに出してもらったらお祝いやお礼にならないよ……!


店を出ると、さっきより弱まっていたけど相変わらず雨が降っていた。

私はまた北川さんの傘に入れてもらい、駅までの道のりを歩いていた。


「笹山さん、今日はありがとう。嬉しかった」

「私こそ、祝う側なのに、お礼言いたいくらい楽しかったです」


目を細めて笑みを浮かべた。

再会したての頃と比べて、自然と笑顔が零れていることに気付く。


「北川さんと過ごすと、時間があっという間に過ぎます」


もう帰らなきゃいけないと思うと、寂しくなってしまう。
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