再会してからは、初恋の人の溺愛が止まりません

「俺も同じだよ。ところで笹山さんの誕生日はいつなの?」

「十月三十一日、ハロウィンです」

「イベントの日なんだ。その日、俺にお祝いさせてくれる?」

「は、はい……っ、楽しみにしてます」


実は中学最後の一年間も孤立しており、家族しか祝ってもらっていなかった。

例え社交辞令だとしても、北川さんからの一言が嬉しくて胸がくすぐったくなった。



いつの間にか雨が上がっていた。

都会では見えないけど、十六歳の誕生日も北川さんとの関わりが途切れませんように……と空に浮かんでいるだろう星に願いを込めた。




帰りの電車も北川さんと一緒だった。


「同じ路線なんですね」

「本当に世間が狭いね」


嬉しいことに北川さんの最寄り駅は私の最寄り駅から二つしか離れていなかった。

北川さんは大学生になってから一人暮らしをしていることが発覚した。

噂上の異性にだらしない私なら、家に寄ってもいい? なんて聞いていたのかな?

実際の私にそんな度胸は全くないけれど……。

異性の、ましてや好きな人のお家に上がるなんてことがあったら、私は心肺停止になるかもしれない……っ。


「私、ここで降ります」


あっという間に最寄り駅に着いてしまった。


「一人で大丈夫?」

「父が駅まで迎えに来てくれるので大丈夫です」


お父さんに友達とご飯を食べると伝えたら、迎えに行くと言ってくれた。


「それなら、良かった。笹山さん、またね」

「さようなら」


私は名残惜しさを感じながら、北川さんに手を振って電車から降りた。
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