僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***

「んっ、……はぁ、っ。……りひ、と……ちょっと待っ――」

 1501号室。
 エレベーターを降りると、本当にすぐそこの部屋が葵咲(きさき)ちゃんの押さえてくれていた部屋だった。

 しっかりしているように見えて、少し方向音痴なところのある彼女だから、ホテル側に分かりやすい位置の部屋をお願いをしたのかもしれない。

 何にしても好都合だ。僕は押し込むようにして彼女を部屋に入れると、扉が閉まりきるのも待たずに性急に唇を塞いだ。葵咲ちゃんが、僕の背後にわずかに開いた隙間を気にして、「待っ、まだドア……」と身じろぐ。

「待てるわけ、ないだろ……?」

 僕がそう言ったのと同時に、パタン……とドアが閉じ切った音が後ろから聞こえて、オートロックが作動した。

 彼女のダッフルコートコートのボタンを、キスしながら次々に外すと、僕は葵咲ちゃんからコートを脱がせる。

「こんなに可愛いことされて、僕がおとなしくしていられると思ってたの?」

 低くつぶやいて、剥ぎ取ったばかりのコートを足元に落とすと、自分の上着も乱暴に脱ぎ捨てて、葵咲ちゃんをギュッと抱きしめた。

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