僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
***
「葵咲、支度できた?」
何とか気持ちを切り替えて脱衣所から出た途端、部屋の中にほのかに甘い香りが漂っているのに気が付いた。
「――この、におい……」
このところ連日のように葵咲ちゃんが身に纏《まと》っていたあの甘ったるいやつと一緒だ。
そう気がついたらにわかに不安になって、僕は「葵咲!?」と声を上げていた。
「――理人っ?」
僕の切羽詰まったような声に、葵咲ちゃんが慌てて駆け寄って来てくれる。
「どうしたのっ? 何かあったのっ?」
心配そうに眉根を寄せて僕を見上げる彼女から、シャンプーに紛れてやはりあの甘い香りがしてきて。
僕は、思わず彼女をギュッと腕に抱きしめた。
「……何で今っ、キミからあの甘ったるいにおいがしてくるんだよっ!」
どうにも感情が抑えられなくて、吐き捨てるようにそう言ったら、葵咲ちゃんが僕の腕の中で「え?」とつぶやいて身じろいだ。
「――ねぇ、理人っ。今日っ……バレンタイン!」
続いて必死の様子で告げられたその言葉に、僕は驚いて葵咲ちゃんを抱く腕の力を緩めた。
「ホントに……気付いて……なかったの?」
バレンタインデーにデートに誘った時点で、とっくに思惑には気づかれていると思っていた、と葵咲ちゃんが溜め息をつく。
理人はそういうイベントごと、大好きだから、絶対勘付かれていると思っていた、と。
「葵咲、支度できた?」
何とか気持ちを切り替えて脱衣所から出た途端、部屋の中にほのかに甘い香りが漂っているのに気が付いた。
「――この、におい……」
このところ連日のように葵咲ちゃんが身に纏《まと》っていたあの甘ったるいやつと一緒だ。
そう気がついたらにわかに不安になって、僕は「葵咲!?」と声を上げていた。
「――理人っ?」
僕の切羽詰まったような声に、葵咲ちゃんが慌てて駆け寄って来てくれる。
「どうしたのっ? 何かあったのっ?」
心配そうに眉根を寄せて僕を見上げる彼女から、シャンプーに紛れてやはりあの甘い香りがしてきて。
僕は、思わず彼女をギュッと腕に抱きしめた。
「……何で今っ、キミからあの甘ったるいにおいがしてくるんだよっ!」
どうにも感情が抑えられなくて、吐き捨てるようにそう言ったら、葵咲ちゃんが僕の腕の中で「え?」とつぶやいて身じろいだ。
「――ねぇ、理人っ。今日っ……バレンタイン!」
続いて必死の様子で告げられたその言葉に、僕は驚いて葵咲ちゃんを抱く腕の力を緩めた。
「ホントに……気付いて……なかったの?」
バレンタインデーにデートに誘った時点で、とっくに思惑には気づかれていると思っていた、と葵咲ちゃんが溜め息をつく。
理人はそういうイベントごと、大好きだから、絶対勘付かれていると思っていた、と。