僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 思わず眉根を寄せて理人の胸元に手を付いて、彼がこれ以上深く自分の中に侵入(はい)りこまないように腰を浮かせてしまった。

 目端に、抑えきれない涙がにじむ。

 今まではどんなに痛くてもちゃんと我慢できてたのに。

 あーん、どうしよう。
 今回は絶対にバレてしまった――。


 明らかにおかしな態度をとった私に、さすがに疑念を抱いたみたいに理人(りひと)の動きが止まる。

「葵咲……()()()?」

 理人が私の名前に“ちゃん”を付けるのは、私に甘えたいときと、私から本音を引き出したい時。

 後者は最近加わった気がする。
 恐らく理人が、私の様子を見て効果的だと判断して無意識に取り入れたんだと思う。

 そうして、今回の「葵咲ちゃん」は紛れもなく後者のほうで。

「――もしかして……痛いの、我慢して……」

 そう言って、理人が私の中から何の躊躇いもないみたいに彼自身を抜き去ってしまう。

「ひゃ、んっ……」

 実際彼に突き上げられるのも、抽挿(ちゅうそう)を繰り返されるのも、今は痛いし辛いって感じている。
 もうこれ以上は無理……って分かっているのに、思わず最後までしていないのに理人がこの行為をやめてしまうと思ったら、それが寂しいとも感じてしまって……。
< 148 / 332 >

この作品をシェア

pagetop