僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「お願……、そ、んな、見、な、……でっ! 恥ずかし、の……」

 膝裏にあてがわれた理人の手にそっと触れて、消え入りそうな声でそうお願いしたら、理人が「――本当、腹立つし嫌になる……」って、聞いたことのないような低い声でつぶやいてから、足を解放してくれた。

 慌てて足を閉じて秘部を手で覆うようにして隠してから、「ご、ごめ、なさっ……」って涙目になったら、そっと抱き起こされて力強く抱きしめられた。

「ごめん、葵咲(きさき)――。僕が怒ってるのは……キミに対してじゃ、ないんだ」

 言って、もう一度私を抱く腕に力を込めると、理人が今度こそ大きく吐息を落とす。

「――ちょっと待ってね。自分でもどうしていいか分かんないぐらい頭が混乱してて。――えっと、少し……気持ちに整理つけるから……。時間、もらえる、かな? その間、このままキミを抱きしめていても、――いい?」
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