僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
「身勝手って……もしキミにうつ、ったりした、ら」

 マスクをしていないことに気付いて、慌てて布団に潜り込んで枯れた喉でモゴモゴと言い募ったら、「その時は理人(りひと)が看病してくれるでしょ?」とか。
 そりゃあもちろん、葵咲(きさき)ちゃんがしんどい時は全力でサポートするけど!
 そんなことになって欲しくないから実家に戻って欲しいわけで。

「葵咲……」
 氷のうを頭から下ろして身体を起こすと、関節がひどく軋んだ。
 でもそんなの今はどうでもいい。

「僕の言うことが……聞けないの?」

 声を低めて彼女を睨んだつもりなんだけど、熱に潤んだ目と、喉をやられて掠れた声では効果が薄かったのか、ふいっと視線を逸らされた。

「――聞けない」

 ややして、ポツンと落とされた言葉に、僕は瞳を見開いた。

 葵咲ちゃん、今なんて……。

 言われた言葉が信じられなくて彼女を無言で見つめたら
「聞こえなかった? 聞けないって言ったの!」
 今度こそハッキリと、怒った声でそう告げられた。

「でも……葵咲ちゃん……」

 途端、彼女のアーモンドアイに気圧(けお)されてひるみそうになるとか。頑張れ、僕!
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