僕惚れ④『でもね、嫌なの。わかってよ。』
 スウェットの上も同じように着せてくれてから、
「し、下はっ! 自分でっ、ね?」

 ソワソワした様子で言って、「わ、私、出かける準備してくるからっ」ってそそくさと寝室を出ていくんだ。

 本当、キミはなんて可愛いんだろうね。

 僕が葵咲(きさき)ちゃんを看病する時は、上も下も全部取り換えてあげる。
 何なら身体中を拭いてあげることだって(いと)わないよ?

 そんなことを考えていたら、ちょっぴり反応してしまった自分に気がついた。「なんだ、僕。案外元気じゃん」と下半身に声をかけて苦笑する。

 とはいえ、やっぱり本調子ではないらしく、いつもほど元気じゃないね。

 はぁっと溜め息をついたら、吐息がいつもより熱かった。

 葵咲ちゃんに癒されて失念しかけていたけど、やっぱり熱はまだ高そうだ。

 葵咲ちゃんが部屋を出て行っただけで、一気にしんどさが蘇ってくるんだから、僕も大概気分屋だよね。

 葵咲ちゃんに「まだ着替えてなかったの?」って叱られないように、頑張って着替え、済ませておかなきゃ。

 そんな風に思った。
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